皆さんは、ご家庭でパソコンをお持ちですか?最近のパソコン普及率は目覚ましいもので、使えて当たり前の世の中になりつつありますよね。と、言う事でここ最近はめっきり文章を手書で書くことも減ってしまいました。字を書くのが仕事でもある作家の方々にもワープロを使う人が増えてきたとのこと。出版社や印刷所が原稿を読むときに読みにくくて苦労するケースは減っています。しかし、それでも悪筆の手書原稿に出会う例には事欠かないものです。作家は字がうまい、などと考えるのは、とんだ幻想でしょう。
字の読めない、いわゆる悪筆作家ベスト(ワースト?)スリーをあげると、石原慎太郎(作家、東京都知事。『太陽の季節』で芥川賞受賞)黒岩重吾(『背徳のメス』で直木賞受賞)、西村京太郎(『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞受賞。最近は十津川警部ものの旅行ミステリーで人気)あたりだそうです。
とくに、石原慎太郎はデビュー以来悪筆でも有名で、推理小説を書かせた江戸川乱歩が、石原の原稿を受け取ってしばし呆然とした、という逸話がのこっているほど。一人称で書いてあるらしいが、イ(ニンベン)しかわからない。僕、俺、儂のどれなのか。思い余ったある編集者が、ご本人に恐る恐る確かめたそうです。すると「ボクのイメージで当然でしょ、僕ですよ」。
一昔前は丹羽文雄(日本文芸家協会理事長を長くつとめた。『厭がらせの年齢』などの作者)が悪筆の横綱。各印刷所で「丹羽担当」とよばれる悪筆を解読する専門家を配置してあったそうです。それでも新聞や週刊誌の連載を書きまくったのですから、解読専門家は病気するヒマもなかったとか。
しかし、一見、きれいに整然と並んだワープロの文章よりも、手書きの文字には味わいが感じられますよね。わたしたちも、文字を書く回数が少なくなった分、毛筆を習ったり、万年筆に凝ってみたりして文字を楽しみたいものですね。