かぶと塚 私は東福岡安全運転管理協議会の副会長の役職を担っております。先日も北海道で飲酒運転事故が発生し、一家5人全員が死傷されました。交通事故は、被害者のみならず加害者の方にも多大な負荷を受ける事になります。その一例を読んで頂きます。  

   署長様、ご存知のように私の夫も死にました。そして相手の人も死にました。夫は自業自得でありましょうから如何ようにせめられてもしかたありません。でも、あとに残った私と子ども2人にまでその責任があるのでしょうか。私に財産がたくさんあれば、ご遺族の方の気の済むように弁償したいと思います。いくらお金をあげたからと言って亡くなられた人の命を元通りにすることは出来ませんが……。でも私には何もありません。それでも将来家をたてるために貯金していたお金が97万円程あったのでございます。それで私はこのお金とテレビ、冷蔵庫、洗濯機、洋服タンス、時計、指輪、夫の洋服等も売りました代金23万円と合わせて120万円をお見舞金としまして、また夫の退職金をも全部差上げる条件でご遺族の家に持っていったのでございます。 ご遺族のご両親は「こんな少額では納得できないからもっとお金をだしなさい」と申します。私はこのお金が私の全財産でございますからこれ以上のお金を調達することはできませんので幾重にも私の事情を申し上げたのでございます。ご遺族のご両親は親戚回りをしても賠償金をだしなさいともうします。でも、夫の親戚も私の親戚も決して余裕のある生活はしていませんのでぼう大な金額を調達することはとうてい出来ないのでございます。すると次は私に働いて毎月1万円ずつ弁償しなさいと申します。私のような学歴もなく手職もない人間に何万もする給料を払ってくれるところがありましょうか。たとえ就職することが出来ましたところで、弁償金と家賃を払ってしまうと生活費にまでまわすことは出来ないのでございます。 どうして親子3人生活すればよろしいのでしょうか。罪のない子どもたちと生活だけは近所の子どもたちと同じようにしてあげたいと願うのは母として当然のことではないでしょうか。子どもたちは「お父さんはどうしたの」「なぜテレビがなくなったの」「テレビがみたい」とせがまれます。子どもたちは今すやすやねむっております。これからお父さんのもとに行けるのも知らずに! 署長さん、この小さな子どもの命をうばう母をばかな女とおよび下さい。でも、子どもを残したなら、あとの子どもたちの生活を考えるとあわれでなりません。親子3人でお父さんのもとにまいります。ご遺族のご両親のおっしゃることは決してご無理なことではありません。私の夫さえ、酒を飲まずに運転していたならば、決してご子息様を死なせずに済んだのでございます。私と子ども2人の命とひきかえに夫の罪をおゆるし下さるよう、ご遺族のご両親様にはおとりはかりくださいますようお願い申し上げます。

    昭和45年6月、北海道日高管内S町の国道で、38歳の会社員が酒酔い運転で追越しをかけ、対向車と正面衝突し相方とも死亡した。この酒酔い運転の家族は妻(32歳)と5歳及び3歳になる2人の子供がおり、それまで明るい平和な生活をおくっていたが、この事故により一瞬にして幸せな生活が崩れ去り、前途を悲嘆した妻は警察署長宛に遺書を残し、可愛い2人の子供を道連れに自殺した。これはその時の遺書であります。