個人的に好きなブランドである、MaisonMargielaの元デザイナー“マルタン・マルジェラ”のドキュメンタリー映画『WeMargiela』を鑑賞しました。
雑感だけ書くと、単なるドキュメンタリーを超えた素晴らしい作品でした。
 タイトルをはじめて見た時「マルジェラ本人の謎やブランドのヒストリーを紹介するベタなヤツでしょ」と早合点していましたが、実際は有名なショー映像を差し込みながら、関係者が当時を回顧するという形式を取っています。

 特に凄いのが、インタビューを受けた人のポジションと数。
ビジネスパートナーのジェニー・メイレンスは音声のみですが、その娘、企画担当、リテール担当、得意先、仕入先、モデル・そして消費者…と、本人以外の考えられる関係者が勢ぞろい!
 まさにタイトルにもある“We”(私達)といった具合です。
作品には関係者の記憶だけでなく、裏付けとなる某大な紙資料や製品サンプル(このブランドのアイコンアイテムであるボロボロになった初期タビブーツとか!)がスクリーンに映し出され相当な時間とお
金をかけた様子で、ドキュメンタリーとしての完成度が高い!そこから更に深く、グイッと引き込まれたのは、ドキュメンタリーに留まらない充実した内容だったからです。

 1990年代~2000年頃の絶好調だったモード業界の雰囲気を知ることができる貴重な資料にもなっていますし、組織の理想の在り方やクリエーションの本質、そしてクリエーションとビジネスの両立が
どれだけ困難かを教えてくれていて、一度見ただけでは全部を咀嚼できないとても価値のある2時間でした。
正直、この作品を観るまで最近のマルジェラに対してあまり良い印象がありませんでした。というのも、商業主義に走りすぎている気がして、このブランド本来の良さが無くなって来ている感じがあったからです。この作品では、ビジネス面にフォーカスを当てた内容が多く紹介されています。
例えばマルジェラ自身がビジネス的な側面に全く興味がなかった為、何度も倒産の危機があった事や、会社の規模が大きくなるに連れてブランド継続に関わるコレクションのプレッシャーは尋常では無かった事など…そんな状況の悪い中で「何としてもブランドを継続させたい!」と思う様々な人々のブランド愛が伝わって来たのと同時に、マルジェラほどのネームバリューでさえ理想と現実に右往左往していた事実にも衝撃を受けました。商業主義に走るのもブランド継続の為、資金がなければ経営が成り立たないというのは当たり前の話です。私はこのブランドに自分の理想的な価値観を当てはめていたのだな、と思いました。
兎にも角にもこの作品を観て、やはり自分はマルジェラが好きという事を再確認できました。今後も一ファンとして、そしてこの作品タイトルを借りて“We”として応援していきたいと思います。