延元元年の多々良浜合戦については、私は殆ど何にも知識がありませんし何について話をしようか迷っていましたが、11月よりNHKにて放映される「坂の上の雲」について話してみたいと思います。
この小説を読んだのは今から30年ほど前の30代の頃だったと記憶しておりますが、それ以来4〜5回は読み返しており、それほど引きつけられた小説でした。話の内容は、ご存知の方も多いと思いますが明治初期の日清、日露戦争を舞台に多くのその当時の実在の人物を中心に描かれた長編歴史小説です。実は、私は出身が佐世保市でその当時の連合艦隊の基地となっており小さい頃から軍艦に慣れ親しみ興味があったことを思いだします。さらに、私の祖父は、日露戦争に参加した人で、小さい頃、錆付いたロシア兵が使っていた銃剣を持っていたことをはっきりと覚えております。ただ残念なことに、当時は太平洋戦争に負けたことに起因しているのか、父も祖父も戦争のことは多くを語りませんでした。そういった中、この小説は明治に生きた人々が欧米諸国に追いつこうとして、近代化を推し進め、その中でいかに戦ったかがみごとに描かれた小説です。
しかも、最後の戦い『日本海海戦』は、福岡の沖合いの対馬海峡にて行われ世界史上まれにみる一方的な勝利を収めることとなります。この時の連合艦隊司令長官東郷平八郎は、このことにより歴史に名を残すわけですが、私が印象に残っているのはこの小説にも描かれていますが、日清戦争の発端となった豊島沖海戦において清国の軍隊を乗せた英国籍の船舶を沈める時の高速戦艦「浪速」の艦長であり当時大佐であった東郷艦長の沈着冷静でしかも確固たる行動です。その時もイギリスの世論が一時激昂し、政府も動揺するわけですが、後に国際法上適法と認められて、日本海軍の行動力が評価されることとなります。このように当時の人々特にリーダーとなった人々の胆力に驚かされます。そのような中どうしても我々が生きている現代と比較してしまいますが、4〜5年前瀋陽の日本領事館での出来事が思いだされ、事なかれ主義というか、無責任というか、恥さらしな人が平気で国の出先機関で堂々と働いているんだなという思いです。しかも、当時の指導者は勝利に浮かれることなくいかに戦争を終わらせるかまで考えていたようです。
このように、我々現代の人々が失ってしまったものを再認識させてくれる小説だと思います。当時映像化は困難といわれていましたが、今回テレビで見れるということで、どんな出来栄えになるのか今から楽しみです。